<2007/May/3 updated>
● 報告 ● 日本リハビリテーション医学会

平成19年度リハビリテーション料に関連する
社会保険診療報酬等の改定について

日本リハビリテーション医学会 社会保険等委員会
担当理事 里宇明元,水間正澄
委員長 田中宏太佳
委員 高橋博達(担当),梅津祐一,江端広樹
染屋政幸,尾花正義,畑野栄治
長谷公隆,古市照人,古閑博明
赤星和人,原 寛美,近藤克則


【はじめに】

平成19年4月1日,リハビリテーション(以下,リハ)にかかわる診療報酬の算定方法が一部改定された.昨年4月に4疾患別リハに基づく診療報酬体系への大変革が行なわれたが,新制度で大きく問題となった点が,今回再改定されたものと解釈される.改定の骨子について述べる.

【リハ料算定の日数上限に関する再改定】

1)日数上限を超えてのリハ料算定が可能とされる除外対象疾患が新たに追加
マル1これまでの除外対象疾患(表1)の中で,慢性閉塞性肺疾患(COPD)と心筋梗塞,狭心症は,今回の再改定で追加された疾患である.
マル2これまで除外対象疾患であっても,期限を超えてリハ料を算定する場合には,『治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合』が必要条件とされていた.今回の再改定では,『先天性又は進行性の神経・筋疾患の患者及び障害児(者)リハ料に規定する患者(加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾患の者を除く.)』においては,この表現が削除され『治療上有効であると医学的に判断される場合』という表現になっており,『改善』を必要条件としない点が明確となった.

表1 リハ算定日数上限の除外対象患者

(改善の見込みがある場合に除外対象となる患者)
●失語症,失認および失行症の患者
●高次脳機能障害の患者
●重度の頸髄損傷の患者
●頭部外傷及び多部位外傷の患者
●慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者(2007年4月より追加)
●心筋梗塞の患者(2007年4月より追加)
●狭心症の患者(2007年4月より追加)
●回復期リハ病棟入院料を算定する患者
●難病患者リハ料に規定する患者(先天性又は進行性の神経・筋疾患の
の者を除く.)
●障害児(者)リハ料に規定する患者(加齢に伴って生ずる心身の変化
に起因する疾病の者に限る.)
●上記に準じて必要と認められる場合(2007年4月より追加)
(治療上有効であると医学的に判断される場合に除外対象となる患者)
●先天性又は進行性の神経・筋疾患の患者
●障害児(者)リハ料に規定する患者(加齢に伴って生ずる心身の変化
に起因する疾患の者を除く.)

2)日数上限を超えてのリハ料算定を行う場合の注意点
マル1先に述べたように除外対象疾患(表1)の一部の患者で,『治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合』には,算定日数の上限を超えて疾患別リハ料を算定することが可能となった.しかしこの場合,『3カ月に1回以上のリハ実施計画書の作成』が求められ,その内容には『マル1これまでのリハの実施状況,マル2前月の状態と比較した当月の患者の状態,マル3今後のリハ計画,マル4FIM・Barthel Index・関節可動域などの数値を示した継続理由など』の記載が必要である.さらに毎月の『診療報酬明細書の摘要欄に同様の内容を具体的な数値データとともに記載する』ことも,併せて求められている.
マル2さらに算定点数の逓減制が導入され,『心大血管疾患リハ料では治療開始日から121日以降,脳血管疾患等リハ料では発症日等から141日以降,運動器リハ料では121日以降,呼吸器リハ料では治療開始日から81日以降は,逓減された点数を算定』することとなった(点数は図1を参照).
マル3この逓減された算定点数は,除外対象疾患(表1)にも適用される.数値指標を用いた継続理由等をリハ実施計画書に書く必要のない場合は,前項1)-マル2の『先天性又は進行性の神経・筋疾患の患者及び障害児(者)リハ料に規定する患者(加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾患の者を除く.)』だけである.また,期限を超えても点数逓減されないのは,『児童福祉法第43条の3に規定する肢体不自由児施設又は同法第27条第2項に規定する国立高度専門医療センター及び独立行政法人国立病院機構の設置する医療機関』の通園者と外来患者だけである.

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図1 平成19年4月以降のリハ診療報酬の概要
(ただしリハ料とリハ医学管理料の重複算定は不可)
図をクリックすると、鮮明なPDFファイルがごらんになれます

【リハを長期実施する手段としての医学管理料の新設】

1)疾患別リハ医学管理料とは?
マル1今回の再改定では,従来の『疾患別リハ』に加えて『疾患別リハ医学管理料』が新たに設定された.この『医学管理料』は低額の算定に抑えられている(図1).反面,発症日等からの日数上限や『状態の改善が期待できると医学的に判断される場合』という必要条件もないため,介護保険の対象にならない障害者や介護保険の対象者であっても地域的事情でサービスが不十分なため維持期リハを受けられない事情を持つ多くの患者を対象とすることができる.
マル2疾患別医学管理料では,『状態の改善』を算定の必要条件にしていないため,作成すべき書類も簡便化されている.3カ月に1度のリハ実施計画書には,『マル1これまでのリハの実施状況,マル2前月の状態と比較した当月の患者の状態,マル3今後のリハ計画等』までの記載で充分とされ,数値の提示は求められない.
2)疾患別リハ料と疾患別リハ医学管理料との移行と実施は?
マル1基本的に『医学管理料』を算定できるのは,『リハ料』をも算定できる保険医療機関に限られ,『医学管理』のみを行う保険医療機関は想定されていない.その一方で,疾患別リハ料を算定したことがない患者でも疾患別リハ医学管理料は算定できる.しかし,維持期の疾患別リハ管理料を算定した後に,疾患別リハ料を算定することは原則できない.
マル2リハ医学管理料は,月1〜3日の実施に対しては440点(心大血管・脳血管T)・340点(運動器・呼吸器T)が算定され,4日以上の実施ではさらに440点・340点を算定することができる(図1).つまり通常の疾患別リハであれば,月4単位(週1回・1単位)を施行する程度の点数が配分されており,さらに『1日の実施時間は1単位以上』と規定されている.

【その他】

疾患別リハ又は疾患別リハ医学管理をある保険医療機関で実施している場合には,他の保険医療機関で同一の疾患等に係る疾患別リハ料又は疾患別リハ医学管理料は算定できない.
また,同一の疾患等において医療保険による疾患別リハ料を算定するリハを行った後,介護保険によるリハに移行した日以降は,医療保険における疾患別リハ料は算定できない.および,介護保険によるリハを行った月においては,医療保険によるリハ医学管理料も算定できないことが明記された.

【おわりに】

日本リハビリテーション医学会は,平成19年4月のリハ料再改定に対して以下の見解を表明した.
日本リハビリテーション医学会の平成19年4月1日付けリハビリテーション料再改定についての見解
1. 日本リハビリテーション医学会は,平成18年11月21日付で,4項目からなる「平成18年診療報酬改定におけるリハビリテーション料に関する意見書」を発表し,厚生労働省に提出した.
2. 今回の改定は,上記意見書の中の算定日数制限に関する問題に関して,1)除外対象疾患が拡大されたこと,2)進行性の神経・筋疾患等において,「改善の見込み」をリハビリテーション継続の要件から外したこと,3)介護保険非該当者および現状で介護保険により適切なリハビリテーションが受けられていない人たちに対し,「リハビリテーション医学管理料」を新設したこと,の3点について,一定の前進があったものと評価している.
3. ただし,診療報酬の逓減制が導入されたことにより,算定日数上限以降にも,さらなるリハビリテーションの継続を必要とする人たちを多く受け入れている施設(*註)では,大幅な減収が予想される.その結果として,必要なリハビリテーションの提供が困難になることが危惧され,この点についての早急な検証と見直しが必要と考える.
4. 今回の改定で新設された「リハビリテーション医学管理料」の点数および回数設定の妥当性についても,今後,十分な検証を行う必要があると考える.
5.今回の改定は,あくまで算定日数制限に関するものであり,リハビリテーション医療の一層の発展のためにも,今後,疾患別リハビリテーション体系に関する問題,回復期リハビリテーション病棟料の問題などについても引き続き検討を加え,必要な改定を具体化していくべきであると考える.

 * 註:現時点で,1)肢体不自由児施設,重症心身障害児施設,通園施設など小児のリハビリテーションに特化した施設(**註の註),2)脊髄損傷,外傷性脳損傷などの重度障害者のリハビリテーションを主に提供し扱っている施設,3)難病に特化した施設,4)高次脳機能障害者のリハビリテーションに力を入れている施設,5)言語聴覚療法を中心に行っている診療所などにおいて,逓減制導入による大幅な減収が予想されている.

** 註の註:『児童福祉法第43条の3に規定する肢体不自由児施設又は同法第27条第2項に規定する国立高度専門医療センター及び独立行政法人国立病院機構の設置する医療機関』の通園者と外来患者においては,期限を越えても点数逓減されないこととなった.