関連機器委員会

担当理事 住田 幹男
委員長 千田 益生(平成20年3月31日まで)
越智 文雄(平成20年6月28日から)
委員 石井 雅之,市江 雅芳,沖  貞明
高塚  博,陳  隆明,古川  宏

はじめに

関連機器委員会では,従来明確でなかった運動療法・運動療法機器および作業療法・作業療法機器を分類し,「リハビリテーション医学」に報告した1,2).運動療法機器・作業療法機器の数は非常に多く,また増加,淘汰を繰り返し,分類は,現時点での分類であり,今後も一定期間経過したら,見直す必要がある.機器を分類し,さらに,実際のリハビリテーション(以下,リハ)現場で,運動療法機器・作業療法機器がどのように使用され,その有効性についてどのように感じられているかを検証することは重要である.日本リハ医学会研修施設を対象に,運動療法機器・作業療法機器に関するアンケート調査を行った.このアンケートの目的は,研修施設に備えるべき機器とは何かを提案するため,また,機器購入を考える場合の参考資料とすることである.

対象と方法

対象は,日本リハ医学会研修453 施設を対象とした.アンケートの内容は,研修施設の全体の病床数,リハ科病床数,医師数(専門医数),理学療法士(PT)数,作業療法士(OT)数,言語聴覚士(ST)数,また一日の理学療法・作業療法の入院・外来数をまず調査した.代表的な運動療法機器39 種(運動療法機器26種,物理療法機器7 種,評価・測定機器6 種),同様に代表的な作業療法機器45 種(上肢訓練機器24 種,作業療法機器10 種,その他11 種)について,所有の有無,対象疾患,使用目的,使用頻度,効果について尋ねた.所有の有無では,「あり」「なし」に加えて,「ないが購入希望」を入れ,その機器の評価を行った.対象疾患は,1.脳卒中その他の疾患,2.脊髄損傷,その他の脊髄疾患,3.関節リウマチ,その他の骨関節疾患,4.脳性麻痺,その他の小児疾患,5.神経及び筋疾患,6.切断,7.呼吸器・循環器疾患,8.その他(悪性腫瘍,熱傷など)の8 種類から,それぞれの機器について上位3 位まで選択していただいた.使用目的では,運動療法機器においては,1.可動性訓練,2.筋力増強訓練,3.全身持久力訓練,4.協調性訓練,5.巧緻性動作訓練,6.スポーツトレーニング,7.認知・高次脳機能訓練,8.リラックス,9.疼痛の軽減,10.診断・評価のうち,それぞれの機器について目的として合致するものを上位3 位まで選んでいただいた.作業療法機器では,6.スポーツトレーニングに代えて,6.感覚統合訓練とした.使用頻度では,1.非常によく使用,2.よく使用,3.ときどき使用,4.まれに使用,のうちから選択してもらい,効果は,1.非常に有効,2.有効,3.無効,4.無効だが患者が希望,から選んでもらった.

結果

1.回答を得た施設について

日本リハ医学会研修453 施設を対象とした.回答を得たのは,253 施設であり,回収率は55.8%であった.研修施設の全体の病床数では,少ないほうでは50 床以下が7 施設であり,また多いほうでは1,000 床以上が18 施設であるが,200 ~ 400 床の施設が66 施設と,もっとも多かった.リハ科の病床を持つ施設は134 施設であった.リハ対象疾患のうち多いものを3 つ選んだ場合,脳卒中,その他の脳疾患が231 施設でもっとも多く,次いで関節リウマチその他の骨関節疾患が219 施設であり,第3 位は神経および筋疾患の102 施設であった.医師数は平均で3.9 人(専門医数1.7 人)であった.平均PT数は13.2人,平均OT 数8.7人,また平均ST 数は3.4人であった.

2.運動療法機器・作業療法機器の所有率と使用頻度および購入希望(有効度に関しては,3 項で記述する)

1)運動療法機器の所有率と使用頻度および購入希望

  • a)運動療法機器(図1)

所有率では,斜面台,肋木,下肢エルゴメータ,牽引装置,バランス訓練機器で約90%と高かった.ただ,肋木,牽引装置では使用頻度が低かった.上肢滑車牽引装置,渦流浴,スタンディングテーブル,トレッドミルで所有率は60%を超えていたが,上肢滑車牽引装置で使用率は低い傾向があった.所有率が,30~50%であったのは,肩輪転器から治療プールであるが,肩輪転器,前腕回内回外運動器,手関節屈曲伸展運動器,バイオフィードバックシステムで使用頻度は著しく低かった.バイオフィードバックシステムは,購入希望がもっとも高かったが,案外使用されていないことが示された.購入希望が高かったのは,重心動揺測定訓練装置,懸垂免荷装置,筋機能評価運動装置であったが,やはり使用頻度は低かった.CPM 機器の所有率は約40%であったが,使用頻度は高かった.ステップマシンや上肢エルゴメータでは所有率は低いが,使用率は高かった.

図1 運動療法機器の購入希望率と所有率(及び使用頻度)

  • b)物理療法機器(図2)

ホットパック,低周波・干渉波,マイクロ波で所有率が80%を超え,特にホットパックは所有率がほぼ 100%であり,使用頻度も非常に高かった.パラフィン浴,超音波は所有率60~70%であったが,使用頻度は案外低かった.

図2 物理療法機器の購入希望率と所有率(及び使用頻度)

  • c)評価・測定機器(図3)

パルスオキシメータは所有率が90%であり,使用頻度も非常に高かった.パルスオキシメータは訓練中に使用するために使用頻度も高かったのであろう.筋電図は所有率が約45%と低く,使用頻度も低かった.他の評価・測定機器も使用頻度は案外低かったが,購入希望は高かった.訓練機器ではないので,使用頻度は低かったのかもしれない.

図3 物理療法機器の購入希望率と所有率(及び使用頻度)

2)作業療法機器の所有率と使用頻度および購入希望

  • a)上肢訓練機器(図4)

セラプラスト,重錐バンド,セラバンド,サンディングボードとセット一式は所有率80%以上であり,使用頻度も高かった.スケートボード,ハンドグリップ運動器,セラボール,スプリングバランサー,渦流浴装置は所有率が約50 ~ 70%であり,スプリングバランサー以外は使用頻度も高かった.スプリングバランサーは,使用すべき対象が少ないために使用頻度が低い可能性がある.アームサスペンション以下は,所有率は50%以下であり,使用率はゴム式手指運動器,上肢エルゴメータ,動力による他動運動器などは比較的高かった.購入希望率では,特に高い機器はなかった.

図4 上肢訓練機器の購入希望率と所有率(及び使用頻度)

  • b)作業療法機器(図5)

治療用ゲーム,自助具からパーソナルコンピュータまでの8 種の機器で,所有率が80%以上(ほとんどは 90%以上)であり,木工用具以外は使用率も高かった.自立支援機器,陶芸用具とも所有率は60%近くであったが,使用頻度は低かった.入院期間が短縮し,木工や陶芸などの作業療法を行う時間的余裕がないように思われた.所有率が高いので,購入希望率は低かった.

図5 作業療法機器の購入希望率と所有率(及び使用頻度)

  • c)その他の作業療法機器(図6)

ボールは所有率が約90%であり,使用頻度も高かった.ロール,不安定板の所有率は約50%であり,使用頻度も高いとは言えなかった.他は,所有率30%以下であり,姿勢保持シート,ブランコ,ハンモックなどでは所有率は低かったが,使用頻度は比較的高かった.小児施設などで利用頻度が高い施設特異性が推測された.

図6 その他の作業療法機器の購入希望率と所有率(及び使用頻度)

3.運動療法機器・作業療法機器の有効度

所有率10%未満は除外し,「非常に有効」を有効と感じていると考え,「非常に有効」率の高い順に記載した.

1)運動療法機器の有効度

  • a)運動療法機器(図7)

下肢エルゴメータ,CPM 機器,バランス訓練機器,上肢エルゴメータで,「非常に有効」は30%を超えていた.これらの機器を有効であると考えていることがわかる.所有率とは異なり,使用頻度と関連していた.一方,肋木,上肢滑車牽引装置,前腕回内回外運動器,手関節屈曲伸展運動器,肩輪転器では10%に満たなかった.これらは,有効とは考えられていないことがわかり,下位3 種は「無効」と答えた施設が 10%を超えていた.案外ハバードタンク,懸垂免荷装置を無効と回答した施設も10%近くあった.

図7 運動療法機器の有効度(所有率10%未満は除外)

  • b)物理療法機器(図8)

ホットパックで,「非常に有効」は24.8%であった.その他の物理療法機器では,10%程度であり,あまり有効と考えていなかった.レーザー治療器,赤外線治療器で「無効」が比較的高く,10%近くであった.

図8 物理療法機器の有効度(所有率10%未満は除外)

  • c)評価・測定機器(図9)

パルスオキシメータ,呼気ガス分析装置,その他の動作解析装置で「非常に有効」が30%を超え,有効であると考えている施設が多いということがわかった.特に,パルスオキシメータで60%近くの施設で有効であると考えられたおり,リハ治療には不可欠であるといえる.「非常に有効」と回答した施設が,筋電図で25.7%,床反力計21.6%,3 次元動作解析装置20.8 %,と20%を超えていた.他の療法機器と比較して,有効度は高い傾向があった.「無効」と回答した施設は少なかった.

図9 評価・測定機器の有効度(所有率10%未満は除外)

2)作業療法機器の有効度

  • a)上肢訓練器(図10)

セラプラストのみが「非常に有効」が30%を超えていた.渦流浴装置,重錐バンド,サンディングボード,上肢エルゴメータ,Cybex 等,で20%を超えており,比較的有効であると考えられていた.アームサスペンジョン以下で「非常に有効」は10%以下であり,特に肋木,前腕回内回外運動器,手関節屈曲伸展運動器,肩輪転器,指はしごでは,「非常に有効」は5%以下であり「無効」は10%近くであった.

図10 上肢訓練器の有効度(所有率10%未満は除外)

  • b)作業療法機器(図11)

ペグボード,ADL 用設備,自助具,治療用ゲーム,家事用設備は,「非常に有効」が30%を超えており,有効性を認めた施設は多かった.手工芸,パーソナルコンピュータ,自立支援機器は20 %を超えていた.陶芸・木工用具は「非常に有効」は10%以下であった.「無効」と回答されたのは,陶芸・木工用具でわずかに認めた.全体的に「非常に有効」とした率が高かった.

図11 作業療法機器の有効度(所有率10%未満は除外)

  • c)その他(図12)

ブランコのみで「非常に有効」は30%を超えた.ハンモック以下は,「非常に有効」は15~25%であり,「無効」と回答された機器は少なかった.

図12 その他の作業療法機器の有効度(所有率10%未満は除外)

4.小児対象施設と小児対象施設以外の施設における使用頻度の差の検討

小児対象施設とは,施設で「リハ対象疾患のうち多いもの」を選んでいただいたが,その時「脳性麻痺,その他の小児疾患」を選んだ施設であり,34 施設あった.従って,小児対象施設以外とは,219 施設である.

1)運動療法機器の所有率の比較(図13)

小児対象施設では,小児対象施設以外と比較して,スタンディングテーブル,治療プール,3 次元動作解析装置の所有率が高かった.渦流浴,超音波などの物理療法機器や下肢エルゴメータ,筋機能評価運動装置,ステップマシンなどの筋力増強訓練機器などの所有率は低かった.

図13 小児専門施設と小児専門施設以外の施設における運動療法機器(運動療法機器,物療機器,評価・測定機器)の所有率の比較

2)作業療法機器の所有率の比較(図14)

作業療法機器の所有率では,小児専門施設の特徴が明らかになっていた.小児専門施設で所有率が高かったのは,ボール,ロール,不安定板,傾斜プレート,姿勢保持シート,移動可能な姿勢保持装置,ハンモック,ブランコ,回転プラットホームであった.所有率が低かったのは,サンディングボード,ハンドグリップ運動器,スプリングバランサー,渦流浴,パラフィン浴などであった.

図14 小児専門施設と小児専門施設以外の施設における作業療法機器(上肢訓練機器,作業療法機器,その他の作業療法機器)の所有率

3)所有率が高い(50 %以上)運動療法機器における,使用頻度が「非常によく使用」「よく使用」と回答した施設率(図15)

小児対象施設に特徴的であったのは,スタンディングテーブル,トレッドミルを「よく使用する」と回答した施設が多かったことである.また,物理療法機器を「よく使用する」と回答した施設が,小児対象施設以外の施設に比較して低かった.

図15 小児専門施設と小児専門施設以外の施設における,所有率の高い(50%以上)運動療法機器の使用頻度(非常に良く使用,良く使用)

4)所有率が低い(10~50%)運動療法機器における,有効性が「非常に有効」と回答した施設率(図16)

小児対象施設に特徴的であったのは,上肢エルゴメータ,その他の動作解析装置,治療プール,ステップマシン,懸垂免荷装置,を「非常に有効」と回答した施設が多かったことである.小児対象施設での有効性が示されていた.

図16 小児専門施設と小児専門施設以外の施設における,所有率の低い(10~50%)運動療法機器の有効性(非常に有効)

5)所有率が高い(50%以上)作業療法機器における,使用頻度が「非常によく使用」「よく使用」と回答した施設率(図17)

小児対象施設で,ボール,パーソナルコンピュータ,自立支援機器,スプリングバランサーなどを,小児対象施設以外の施設と比較して,よく使用するとした施設が多かった.逆に,重錐バンド,セラバンド,ハンドグリップ運動器など筋力強化運動機器などの使用は少ない傾向がであった.

図17 小児専門施設と小児専門施設以外の施設における,所有率の高い(50%以上)作業療法機器の使用頻度(非常に良く使用,良く使用)

6)所有率が低い(10~50%)作業療法機器における,有効性が「非常に有効」と回答した施設率(図18)

小児対象施設に特徴的に認められたのは,不安定板,ロール,傾斜プレート,姿勢保持シート,その他の動力による他動運動器,また,小児以外の施設では有効性が認められなかった手関節屈曲伸展運動器や前腕回内回外運動器を「非常に有効」と回答した施設が多かった.

図18 小児専門施設と小児専門施設以外の施設における,所有率の低い(10~50%)作業療法機器の有効性(非常に有効)

考察

特掲診療料の施設基準等(平成18 年4 月1 日改訂)から,心大血管疾患リハ(Ⅰ)で備えておくべき機械・器具は,ア)酸素供給装置,イ)除細動器,ウ)心電図モニター装置,エ)ホルター型心電図,オ)トレッドミルまたはエルゴメータ,カ)血圧計,キ)救急カート,ク)運動負荷試験装置と記載されている.脳血管疾患等リハ(Ⅰ)では,歩行補助具,訓練マット,治療台,砂嚢などの重錐,各種測定用器具(角度計,握力計等),血圧計,平行棒,斜面台,姿勢矯正用鏡,各種車椅子,各種歩行補助具,各種装具,家事用設備,各種日常生活動作用設備等を具備することとある.運動器リハ(Ⅰ)では,各種測定用器具(角度計,握力計等),血圧計,平行棒,姿勢矯正用鏡,各種車椅子,各種歩行補助具等を具備することと記載され,呼吸器リハ(Ⅰ)では,呼吸機能検査機器,血液ガス検査機器等を備えておくこととある.難病患者あるいは障害児(者)リハでは,ア)訓練用マットとその付属品,イ)姿勢矯正用鏡,ウ)車椅子,エ)各種杖,オ)各種測定用器具(角度計,握力計等)を備えておくように記載されている.精神科作業療法では,手工芸(織機,編機,ミシンろくろ等),木工(作業台,塗装具,工具等),印刷(印刷機具,ワープロ等),各種日常生活動作用設備,農具,園芸用具等)を具備しておくように例示として記載されている.以前は施設基準を得るためには非常に多くの用具を備えていることが必要とされていたが,今はそのような規制は緩和されているようである.

運動療法機器で,有効であり所有していた方がよいものとしては,斜面台,スタンディングテーブル,トレッドミル,CPM,ステップマシン,上肢エルゴメータ,バランス訓練機器,下肢エルゴメータなどが示された.物理療法機器では,所有率が高く使用頻度も高いものとして,ホットパック,低周波・干渉波,マイクロ派などが示されたが,有効度としてホットパック以外は低い傾向があった.評価・測定機器で,有効であり所有していた方が良いものとして,パルスオキシメータ,呼気ガス分析装置,その他の動作解析装置が挙げられた.特にパルスオキシメータはリハにおいて必需機器であるといえた.評価・測定機器であり使用頻度は低いが,筋電図,床反力計,3 次元解析装置も,他の機器で比較すると有効度は高く,できれば所有していたほうがよいと考えた.運動療法機器として,小児施設で備えておいたほうがよいものは,スタンディングテーブル,トレッドミル,治療プール,懸垂免荷装置,その他の動作解析装置,ステップマシンなどであった.

作業療法機器について,上肢機能訓練機器で,有効であり所有していたほうがよいものとして,セラプラスト,重錐バンド,セラバンド,サンディングボード,スケートボード,ハンドグリップ運動器,セラボール,渦流浴装置,自転車・上肢・リカンベントエルゴメータ,Cybex 等などがあった.作業療法機器で,有効であり所有していたほうがよいものとしては,ペグボード,ADL 用設備,自助具,治療用ゲーム,家事用設備,手工芸,パーソナルコンピュータ,自立支援機器などがあった.作業療法での「その他」で,有効であり所有していたほうがよいものとして,ブランコ,ハンモック,移動可能な姿勢保持装置,ボールなどはあったが,バイオフィードバックシステム,ロール,姿勢保持シート,不安定板,傾斜プレートなども「非常に有効」が20%近くあり,できれば備えていたほうがよいと考える.小児施設では,ボール,パーソナルコンピュータ,自立支援機器,スプリングバランサー,不安定板,ロール,傾斜プレート,姿勢保持シート,その他の動力による他動運動器,手関節屈曲伸展運動器や前腕回内回外運動器などが,他の施設に比較して有効度が高く,備えておくべきものと言えた.

研修施設に備えるべき機器とは何かを提案するため,また,機器購入を考える場合の参考資料とするために本アンケートを行った.このアンケート結果が,お役にたてれば幸いである.

文献

1)関連機器委員会委員会報告: 運動療法および運動療法機器の分類 リハビリテーション医学2005 ; 42 : 737-742
2)関連機器委員会委員会報告: 身体障害の作業療法および作業療法機器の分類 リハビリテーション医学2006 ; 43 : 719-724