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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する理事長声明

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行(パンデミック)は2年以上経過した現在も収束の兆しは見えず、最近ではオミクロン株の流行により感染者数が再び増加して、医療体制にも多大な影響が生じております。

 このような状況下でも、全国でCOVID-19の患者さんの治療とケアに、昼夜を問わず、医師、看護師、医療職、介護職の皆さまが献身的に取り組まれておられることに、日本リハビリテーション医学会理事長として、心から敬意を表するとともに感謝申し上げます。

 日本リハビリテーション医学会では、リハビリテーション医学を「活動を育む医学」と再定義し、急性期から回復期、そして生活期に至るまでの医療に取り組んでおります。急性期の集中治療室(ICU)での肺炎に対する呼吸器のリハビリテーション治療から回復期の身体・精神機能低下に対するリハビリテーション治療まで、COVID-19の患者さんの治療とケアにリハビリテーション医療は不可欠です。さらに、回復されたCOVID-19の患者さんが元の生活に戻るためには、そこからの「活動」を育み、そして生活期でも「活動」を維持しなければなりません。

 特にご高齢の方やお体の不自由な方がCOVID-19で入院した場合、不用意な安静や不必要な「活動」の低下により心身機能が低下し、自宅や元の施設に戻れなくなることがあることが広く指摘されております。このため、心身機能が低下しやすいご高齢の方やお体の不自由な方に、機能維持を目的としたリハビリテーション医療が必要に応じて十分に提供されることが重要と考えます。そして、適切な感染症対策の上、リハビリテーション医学・医療に通じた医師が診察し、必要な教育を受けた実務経験豊かなリハビリテーション専門職が安全に配慮しながら、それぞれの患者さんの特性を踏まえて、座位・立位を中心とした運動療法を積極的に実施することが必要と考えます。

 COVID-19の入院患者さんは狭い病室内への隔離によって運動量や活動量が低下しやすいために、隔離期間中であっても、発症早期から機能維持を目標とした適切なリハビリテーション治療を可能な限り実施していただきますよう、各医療機関での積極的な取り組みをお願いいたします。また、COVID-19から回復した患者さんを受け入れる後方支援医療機関あるいは介護施設等でのリハビリテーション医療の継続とリハビリテーションマネジメントの実施を決して疎かにされませんようにお願いいたします。

 なお、医学会ではCOVID-19の患者さんへの対応を含め、リハビリテーション医療を行う際に必要な感染対策をまとめた『日本リハビリテーション医学会感染対策指針(COVID-19含む)』(2022年2月21日)を発行いたしましたので、ぜひ活用して頂き、他の疾患の患者さんと同様にCOVID-19の患者さんにも、必要なリハビリテーション医療が実践されますように取り組んでいただければ幸いです。

 リハビリテーション医療に取り組む医師、リハビリテーション専門職、看護職、介護職などの皆さまは、患者さんと直接接触し、また、その時間も長いため、感染してしまう機会が多くなります。さらに、対象となる患者さんのほとんどが、基礎疾患を持つご高齢の方や障害を持つ方であるため、ひとたび感染が広まると、その方々の生命を脅かしかねない事態となります。引き続き、日本リハビリテーション医学会感染対策指針(COVID-19含む)などを参考にしていただき、感染拡大を防ぐための行動をお願いいたします。

 今後も日本リハビリテーション医学会は、リハビリテーション医学・医療に関連する学会、団体、協会などと連携して、リハビリテーション医療・マネジメントに関わる皆さまを支援いたします。また、COVID-19に起因するリハビリテーション医療・マネジメントの問題も各学会、団体、協会などと協議しながら、その対策や要望などを政府・省庁はじめ、各方面に向けて提言したいと考えております。

 引き続き、COVID-19(疑いを含む)の患者さんとご家族、ご関係の方々、そしてCOVID-19に関連するリハビリテーション医療・マネジメントに従事される皆さまを全力で支援して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

令和4年4月12日
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
理事長 久保 俊一

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