第7回秋季学術集会 男女共同参画委員会企画シンポジウム報告レポート
男女共同参画委員会企画シンポジウム
「男女共同参画の新たなる視点を目指して
―リハビリテーション科医のワークライフバランス(子育て・介護編)―」
第7回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会において開催された男女共同参画委員会企画シンポジウム「男女共同参画の新たなる視点を目指して―リハビリテーション科医のワークライフバランス(子育て・介護編)―」の座長・シンポジストの先生方に、講演内容とシンポジウムのご感想をおまとめいただきましたので紹介いたします。
概要
- 日時:2023年11月4日(土)
- 会場:シーガイアコンベンションセンター
- プログラム:
はじめに
蜂須賀 明子(産業医科大学医学部 リハビリテーション医学講座)
「上司・部下のチーム戦略」子育て編
―市中病院― 子育てリハビリテーション科医のスキル向上とキャリア継続
1)わたしの場合
益田 結子(国立病院機構埼玉病院 リハビリテーション科)
2)イクボスを目指して
大森 まいこ(大井中央病院(前職国立病院機構埼玉病院 リハビリテーション科))
―大学病院― チームでつくるワークライフバランス
3)若手男性リハビリテーション科医の育休
田中 亮(産業医科大学医学部 リハビリテーション医学講座)
4)リハビリテーション科医局長と産業医の視点から
伊藤 英明(産業医科大学医学部リハビリテーション医学講座)
「賢人の経験から学ぶ-熟練医師のワークライフバランス-」介護編
5)明るい親の介護から得たもの
豊岡 志保(山形県高次脳機能障がい者支援センター)
6)要介護5 の実父の介護経験から人生を考える
三上靖夫(京都府立医科大学大学院 リハビリテーション医学)
座長・シンポジウム担当委員より
黒木 洋美(大分中村病院 リハビリテーション科)
シンポジウム担当委員より
有馬 美智子(加治木温泉病院 リハビリテーション科(前職いちき串木野市医師会立脳神経外科センター))
はじめに
蜂須賀 明子シンポジウム担当委員/産業医科大学医学部リハビリテーション医学講座
第7回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会において、男女共同参画委員会企画シンポジウム「男女共同参画の新たなる視点を目指して―リハビリテーション科医のワークライフバランス(子育て・介護編)―」を開催しました。
今回のテーマは、リハビリテーション科医のワークライフバランスにおける"多様性" を語る際に、当事者として、ときには仕事仲間として、さまざまな立場で直面する機会が多い「子育て・介護」を取り上げました。子育て編では、上司・部下のペア演者形式で、それぞれ市中病院・大学病院から「子育てリハビリテーション科医のスキル向上とキャリア継続」のノウハウ、最近注目されている「男性育休」の経験についてお話しいただきました。介護編では、キャリアを重ねた熟練医師から介護経験とワークライフバランスについてお話しいただきました。
若手からベテランまでの幅広い年代、さまざまな施設や立場からのご講演は、"多様な"リハビリテーション科医の活動を育み、その活躍を導くヒントをみつける貴重な機会となりました。
リハビリテーション医療は、さまざまな疾患・障害・病態を対象に、多くの診療科や専門職とかかわりながら活動を育むという"多様性" を特徴とします。その中で、リハビリテーション科医が自身の"多様性" やそのあり方について真摯に向き合うことは、よりよいリハビリテーション医療の提供につながるものと期待されます。シンポジウムを振り返り、令和時代におけるリハビリテーション科医のワークライフバランスについて、新たな視点で一緒に考えてみませんか?
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●「上司・部下のチーム戦略」子育て編
1)わたしの場合
益田 結子慶應義塾大学病院リハビリテーション医学教室(前職 国立病院機構埼玉病院リハビリテーション科)
今回の男女共同参画委員会企画シンポジウムにおいて「子育てリハビリテーション科医のスキル向上とキャリア継続―わたしの場合―」というテーマで、上司である大森まいこ先生とペアで発表をさせていただきました。貴重な機会をいただき、心より感謝申し上げます。出産・育児・介護は女性だけが担う課題ではなくなってきている現況を、このたびのシンポジウムを通じて強く実感いたしました。それはとても心強いことで、推進されていくべき風潮です。その一方で特に女性医師の多いリハビリテーション科では、医師が休みやすい環境を作るのみならず女性のキャリア継続・復帰が要になってくると確信した次第です。
私は今回のシンポジウムで、専門医取得前に2人子どもを出産し、紆余曲折がありながらも周りに支えていただきキャリアを継続できている、という個人の経験をお話しさせていただきました。ワンオペ育児で綱渡りの日々に、迷惑をかけるくらいなら辞めてしまいたいと思うことも幾度となくありましたが、埼玉病院での上司、大森先生と出会い「細くても長く続けることの大切さ」を身をもって教えていただけたことが私の医師人生でのターニングポイントとなりました。 気軽に話のできる環境の中で親身に相談に乗っていただき、時にはお尻を叩いてもらうことで必要なスキルを身につけられ、自信をもって診療に携わることができるようになりました。気がついたら心から楽しみながらリハビリテーション科医をしている自分がいました。年長となった下の子も少しずつ手が離れていくのを実感する中、「仕事を続けていてよかった」と感じる毎日です。
発表の時点では、居心地のよすぎる埼玉病院をそろそろ卒業して視野を広げようかな、とお話しさせていただきましたが、2024年4月からは慶應義塾大学病院に戻りリンパ浮腫外来などで診療に携わることになりました。不慣れで苦戦することもありますが困ったときにはすぐに指導をいただける環境で、尊敬する先輩方、頼もしすぎる同僚や後輩たちに囲まれ楽しく仕事を続けています。年次も上がり、私も指導される側からする側に立つことが多くなってきました。互いに切磋琢磨しながら磨いたスキル、それに裏打ちされた自信と、何より大森先生から引き継いだリハビリテーション診療を楽しめる職場環境を、今度は私が後輩たちに授けなければならないと思っています。私の密かな目標はリハビリテーション科を選んでよかった!と思える医師を増やすことです。キャリアを継続していける人、離れても戻ってくる人が増えたらうれしい限りです。
今回のシンポジウムで育児や介護の経験をさまざまな視点からうかがうことができ、周囲を見渡したときに、見え方が少し変わったような気がします。男性女性関係なく互いの大変な時期を、その時少し余裕のある人で補い合える、そんな当たり前のことが当たり前に叶う職場環境を築いていけましたら幸いです。
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2)急性期病院での工夫
大森 まいこ大井中央病院(前職国立病院機構埼玉病院リハビリテーション科)
いままで「リハビリテーション科医師とは」や「リハビリテーション科医師である自分ができること」を考えながら試行錯誤してきました。また自分自身子育てをしながら働く中で苦労してきたことや周囲の方々に助けていただいたことも多くあります。子育て中の若い先生が、リハビリテーション科医師としてのスキルを磨きキャリアを積めるために少しでもサポートできればと、指導医として管理職として考えてきたことを今回お話しさせていただきました。
リハビリテーション科医師としての臨床スキルのポイントは、①患者さんの変化を一定期間しっかり診る経験により、予後予測、ゴール設定、リスク評価を行う能力を身につける、②リハビリテーション科独自の検査(嚥下造影や内視鏡、針筋電図検査)や手技(ボツリヌス注射や装具の選定など)を習得する、③疾患別のリハビリテーション診療(心臓・呼吸・がんや小児など)にも対応できる知識と経験を身につける、④知識や技術をもち、チームリーダーとしてコミュニケーションをとることによって、患者・家族や、療法士をはじめとする多職種からの信頼を得る、ことだと考えます。
急性期病院では、新患の数が多い、入院期間が短い、などの理由により、入院患者の再診やリハビリテーション治療の観察に時間をかけることが難しい場合が多いですが、マンパワーの確保(病院との交渉や医局への依頼など)や他科との連携(さまざまな疾患の患者依頼や検査数の確保)により、若い先生が上記ポイントをできるだけ意識し、身につけられるような仕事の割り振りや声掛け、指導をするように心がけてきました。
一緒に働いてきた益田結子先生が、子育て中の若手医師の立場として今回のシンポジウムで発表されましたが、特に細かい打ち合わせはしていなかったにもかかわらず、私の話ととてもリンクした内容での発表で、自分が考えてきたことや大事だと思っていたことが伝わっていたことを知り、うれしく思いました。
同様に、伊藤英明先生と田中亮先生の間にも、若手リハビリテーション科医のためにキャリアアップとワークライフバランスを考えている上司と、それを信頼して頑張っている若手医師の絆を感じ、励まされる思いでした。
三上靖夫先生と豊岡志保先生のご講演では、介護の経験の中で、さらにご家族との絆を深められ、リハビリテーション科医としての客観的な視点も忘れないプロフェッショナルな姿勢を保っていらしたことに感銘を受けました。
今回のシンポジウムで、リハビリテーション科医は活動、生活をみるとともに、人生をみる医師であり、自分自身がいろいろな経験をすることによって「人生をみるリハビリテーション科医」としての深みを増すということもあらためて感じました。
シンポジウムに参加する機会をくださった大会長の帖佐悦男先生、男女共同参画委員会統括副理事長 島田洋一先生、担当理事津田英一先生、委員の有馬美智子先生、黒木洋美先生、蜂須賀明子先生に感謝申し上げます。座長も務めてくださった黒木先生、蜂須賀先生には準備の段階から細やかなお気遣いをいただき、両先生のシンポジウムに対する思いなどをうかがうことができたことも貴重な経験でした。
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3)若手男性リハビリテーション科医の育休
田中 亮産業医科大学医学部リハビリテーション医学講座
2023年11月に宮崎で開催された秋季学術集会の男女共同参画委員会企画シンポジウム「男女共同参画の新たなる視点を目指して―リハビリテーション科医のワークライフバランス(子育て編・介護編)―」の中で、「チームでつくるワークライフバランス―若手男性リハビリテーション科医の育休―」をテーマに私の育児休業(育休)の経験を発表させていただきました。当時は卒後5年目(リハビリテーション科専攻医3年目)という立場で、2週間の育休を取得しました。男性の育休はまだ一般的ではありませんでしたが、職場関係者の支援により円滑に育休を取得することができました。大学病院では、病棟業務や他科入院患者のリハビリテーション処方など外来業務を中心に、装具外来、ボツリヌス治療、嚥下造影、筋電図検査など専門外来も行っています。入院、外来診療、各種検査とも指導医と専攻医を含む屋根瓦式の複数担当制であり、業務調整をしやすく、育休を取得しやすい体制でした。育休の期間としては長くはありませんでしたが、家事・育児の大変さや重要性を実感することでき、自身の家事・育児スキルを向上させることができました。育休後も、夫婦で家事・育児をより役割分担できるようになったと感じています。また、発表にあたって育児・介護休業法や専門医プログラムについて勉強し直しましたが、子育て世代の専攻医に対する支援は充実しつつある一方で、短期間のローテート中は育休の取得要件を満たすことが難しいことや、勤務先が複数あることで給付金額が少ないことなど、まだまだ課題が多いということも再認識しました。育休取得にあたっては制度のみならず、周囲の理解やサポートが必要になると思います。やはり早めに準備を整え、職場に相談することが重要だと感じました。今後も子育て世代の医師へさらなる支援が進んでいくことが望まれます。
シンポジウムでは、各シンポジストの先生からリハビリテーション科医のキャリア形成や親の介護経験などをテーマとした貴重なご講演があり、私自身も非常に感銘を受けました。ワークライフバランスを考えるうえで、どのように育児や介護に参加し仕事と両立させるかは個々人の置かれた状況によって大きく変わってくると思います。各先生の貴重な経験を聴くことができ、大変勉強になりました。また、男女共同参画委員会の先生方には親身に発表のサポートをしていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。今後もリハビリテーション科医として、また家庭をもつ身として精進してまいります。
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4)リハビリテーション科医局長と産業医の視点から
伊藤 英明産業医科大学医学部リハビリテーション医学講座
医局長としてこれまで複数の女性医師の産前産後休業(産休)・育児休業(育休)に携わったが、このたび男性医師の育休にかかわる機会があった。男性の育児参画については育児に協力するのではなく主体的に参画することが求められており、男性の育休取得を促進する取り組みが国として行われている。男性の育休取得は増加傾向であり、今後も取得率の上昇が期待されている分野である。医療界でも育休を取得するための制度は整備されつつあるが、一方で6 カ月程度の短期間で病院を異動する機会がある専攻医は、その期間に重なると長期の休業が取得しにくい現状がある。また上司との人間関係構築までに時間がないことも課題として挙げられ、今後は整備された制度を利用できる環境を作れるかどうかが課題になると思われる。厚生労働省の「令和元年度雇用均等基本調査」において、男性の育休取得率は7.48%となっており増加傾向であった。一方で取得が進まない理由として令和元年(2019年)7月の厚生労働省「男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取り組みについて」の資料によれば、男性が育児休業を取得しなかった理由で最も多かったのが「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」で37.0%、次いで「会社で育児休業制度が整備されていなかった」で30.0%であり、制度に加えて周囲の雰囲気が大きな要因となっていることが想定される。そもそも人手不足がいわれる医療界においても、環境整備とともに全体として仕事と子育ての両立に対して理解を深めるような取り組みが必要であろう。私は産業医の実務もしており、一般企業における産休・育休の制度を利用した従業員にも接する機会があった。さらに勤務先でも男性療法士が育休取得した経験や他の医療機関で男性医師が1歳になるまでの育休を取得したことを耳にしていた。前例を目にしていると受け入れやすいということはあると思われ、今後もその経験を生かしていく必要はあると考える。今回の男性医師の2週間の育休取得については、周囲の理解もあり無事に終了した。シンポジウムでは、今回の経験について産業医からの視点も踏まえて発表した。
シンポジウム全体を通して、女性医師の出産後の育児休業からの復職、介護休職などさまざまな事情を抱えながらリハビリテーション科医師として勤務し、社会に貢献する姿をみせていただいた。私は今回事情により現場で講演を直接拝聴できなかったが、アーカイブで視聴する中で私も含めて誰もがいつどの立場になるかもしれず、社会のサポートを受けながら仕事を続けていくことの重要性を実感した。専門性を身に着けてのキャリア継続という言葉はとても印象に残っている。
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●「賢人の経験から学ぶ-熟練医師のワークライフバランス-」介護編
5)リハビリテーション科医師、経験を仕事に活かす
豊岡 志保豊岡整形外科
2023年秋に宮崎市シーガイアコンベンションセンターで開催された第7回秋季学術集会での男女共同参画委員会によるシンポジウムで、私の印象に残ったキーワードは家族、キャリア、ライフイベントでした。子育て、育児は家族の成長過程、介護はある意味家族の終結ともいえます。
私は母の介護を通して同じような世代で親の介護を不安に感じている方たちと知り合いました。何が不安かわからない介護以前、そして、いきなり介護が始まり困っている人たちです。彼女たちと話して感じたことは、不安や悩みの原因は実はその人自身にあるということです。介護をしていると親の育て方や兄妹との関係、幼かった頃の自分がみえてきます。自己の成長を考えると、親の介護は自分がどのように育ってきたか、そして子どもを育てるときは自分が何を大切にしたいかをみつめなおすチャンスです。
リハビリテーション科医師として何百名という患者さんの自宅退院や施設入所を計画しながら、自分の母の介護では当初、思うように進められない時期がありました。よい介護をしている自分と実際の気持ちに乖離があったのです。だんだん認知が低下していく母から以前のように上から目線で「あなたは昔からソソッカシイ」「もう少しセンスのよい(食事の)盛り付けの仕方があるでしょう」など言われると、5分前のことは忘れているのにとムッとしました。病院から自宅に帰り、母の笑顔が増えて、ときに口うるさく父に注文をつけるようになったとき、介護チームの主役は私でなく母であることに気づいたのでした。昨年、寝たきりの母が夢うつつの中で、「お父さんお母さんどうして早く逝っちゃたの」と話すのを聞くと、気丈だった母の知らない一面に胸がつまるような気持ちになりました。
母の介護生活で私にとってとても貴重だったのは、母だけでなく、父親や兄弟とのつながりをもう一度振り返られたことです。特に私は2023年の春から高齢者施設の経営と担当医師としての役割を義父から継承し、介護の経験を活かせる場が与えられました。新しい仕事にチャレンジしている段階です。介護経験を背景に医師としてだけでなく、家族としての視点を複層化して伝えられますので、今までのやり方とは異なる個別性のあるアプローチを目標としています。
シンポジウムでは、どの世代の医師も男女を問わず、仕事だけしているわけではないこと、また、子育て世代への対応は制度も変更され、パートナーとしての父親の役割も新しくなっていることを強く感じました。一方、家庭では母親としての役割を担う女性医師は、ライフイベントにかかわる機会が多いからこそ、子育て中もキャリアアップについて積極的に考えることが大切と思います。子育てや介護の経験はキャリアを豊かにする強みとして受けとめていただきたいと思います。
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6)要介護5の実父の介護経験から人生を考える
三上 靖夫京都府立医科大学大学院リハビリテーション医学
タイトルのとおり、要介護5であった実父の介護体験を中心にお話ししました。介護は時間的にも精神的にもかなりの負担となります。父の場合、認知機能の低下で問題行動を起こし、その後徐々に活動性が低下して動かなくなりました。次第に言葉を発することがなくなり、最後は常に閉眼している状態となり、摂食も困難となりました。介護保険によるサービスをフルに活用しましたが、平日日中の限られた時間以外は家族で看なければなりません。食事、入浴、排泄すべてに介助を要しました。介護休暇を取らない限り、仕事との両立が求められますが、仕事に支障をきたさないわけがありません。
ワークライフバランスといいますが、常時evenなバランスをとれるはずがありません。受け持ち患者の状態が悪いときや学会での発表を直前に控えるときは、仕事にバランスは傾きますし、子育てや介護に追われれば、当然生活にバランスが傾きます。仕事を続けるうえで、子育てや介護によるアンバランスが生じるのは当たり前であり、適切な配分は各自が決めることだと私は考えています。しかし、こなせる仕事量が職場で求められるものに達していないときは、周囲のサポートが必要です。この点で、子育て編のお二人の先生のお話は、すばらしいものでした。私の場合も、きっと自分の見えないところで、教室員がカバーしてくれていたのだと思います。
平均寿命と健康寿命に約10年の差がある以上、多くの人々が親の介護に直面することになります。介護負担が増すにつれ、頭の中には常に父や自分が不在時に介護にあたってくれている家族がありました。父と私とではものの考え方が異なり、子どもの頃から相容れないところがありましたが、徐々にまともな会話ができなくなっていく父との毎日の入浴は、わだかまりも流してくれました。父の心情を計り知ることはできませんでしたが、父との濃密な時間は、自分の子どもたちが幼少の頃一緒に過ごした時間と同じく、かけがいのない時間となりました。介護度が増すにつれ家庭の雰囲気は沈みがちになりましたが、予後を予測できた自分にとって介護は苦痛なことではなく、沈滞する家庭の雰囲気を明るくすることを心がけました。普段何気なく過ごしている家族一人ひとりの心情に配慮するようになり、介護を通して家族の団結力は増していくように感じました。
一方で、要介護5の父の介護は、介護保険や介護サービスについて知る絶好の機会となりました。なかでも担当してもらったケアマネジャーから、生活期のリハビリテーション医療や介護について多くのことを身近で学ぶことができ、人生に無駄な時間はないとつくづく感じた次第です。
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座長・シンポジウム担当委員より
黒木 洋美大分中村病院リハビリテーション科
本シンポジウムでは、男女共同参画委員会企画として、生涯を通してのワークライフバランスについて示唆に富んだ講演が展開されました。最初の「上司・部下のチーム戦略」子育て編では、大学機関と民間病院の職場特性を踏まえ、2組4名のパネリストがキャリアアップ時期における仕事と育児の両立について具体的に語りました。産業医の立場からの視点も明らかになり、近い将来は男性医師の育児休暇取得率を上げる必要があり、現場のさらなる理解と支援が欠かせないことがわかりました。次に「賢人の経験から学ぶ―熟練医師のワークライフバランス―」介護編では、演者自身の経験を通してさまざまな視点の提供や、ワークライフバランスの重要性と具体的なアプローチなどの話がありました。質疑応答では参加者からの熱心な質問が現場のニーズに対する共感を呼び起こし、積極的なディスカッションが生まれました。この企画が、現実の課題への解決策や新たなアイデアの創出を促すことができたものであればと願う次第です。
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シンポジウム担当委員より
有馬 美智子加治木温泉病院リハビリテーション科(前職いちき串木野市医師会立脳神経外科センター)
育児、介護と医師の仕事の両立についてリハビリテーション科医の立場から、育児編2名ずつの2組合計4名、介護編2名の先生たちより貴重なお話をうかがいました。医師の働き方改革も2024年4月から始まるので、とても関心のあるテーマだと思いました。
育児編では、2022年から男性の育休取得が可能となり、私の職場の男性スタッフも育休を取っていましたが、法律的なことを知らなかったので、今回産後パパ育休の制度などをわかりやすく説明いただき理解できました。また、リハビリテーション科の若手女性、男性医師が育休を取る際の問題などが具体的に挙げられ、それに対する先輩医師の的確なアドバイスなどがあり、その結果うまく子育てができているとのことで、私も後輩の医師が出産、育児などに携わるときには是非参考にさせていただきたいと思いました。
また、介護編では、どちらかというとつらいイメージの親の介護について、明るく乗り切ろうとされた、お二人の先生たちのお話を聞いて、今後私もかかわらないといけない親の介護について、とても勉強になり、少し楽な気持ちで乗り切れそうな気がしました。
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