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リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査-5-

リハ医学42巻9号掲載

日本リハビリテーション医学会評価・用語委員会
担当理事 住田 幹男
委 員 長 朝貝 芳美
委員 小竹 伴照(担当),浅見 豊子,高橋 秀寿
塚本 芳久,美津 島隆,森田 定雄

はじめに

日本リハビリテーション医学会評価・用語委員会では,1998年発行のリハビリテーション(以下,リハ)関連雑誌の原著論文でどのような評価法が使われているかを調査し,1999年の本雑誌に「リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査」1)として発表した.引き続き1999年発行,2000年発行,2003年発行の各リハ関連雑誌の評価法に関する情報を新たに加え,それぞれ本雑誌に「リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査」2)~4)として報告している.

今回は,2004年発行のリハ関連雑誌の原著論文でどのような評価法が使われているかを追跡調査し,また新たにエビデンスレベルの検討も加えたのでここに報告する.

対象と方法

調査方法は,過去の評価法動向調査と同様である.

2004年発行のArch Phys Med Rehabil,Am J Phys Med Rehabil,Scand J Rehabil Med,Disabil Rehabil,リハ医学,総合リハ,臨床リハ,を選び,2004年の記事の中で原著論文を対象に評価法の抽出を行った.

評価法の定義は,何らかの基準に当てはめて判断する方法とし,血液検査など単に数値を測る「測定」は対象から除外した.評価法の選択基準の概略を以下に示す.

  • 原著(査読のあるもの)のみとする.依頼原稿は採用しない.
  • 1評価法を1レコードとする(1論文にいくつも評価法があれば何レコードにもなる).
  • 大腿骨頸部内側骨折の程度分類など疾患そのものの評価法も入れる.
  • 測定,計測は入れない.
  • Visual analogue scaleは,単にVisual analogueしているものは却下,両端の表現などに独自性あるなら採用.

また,脳卒中合同ガイドライン委員会の脳卒中のevidence levelに関する分類(2001)5)を基準にして,今回の評価法抽出対象となった論文のエビデンスレベルを分類した.

エビデンスレベル 
Ia RCTのメタアナリシス(RCTの結果がほぼ一致) 
Ib すくなくとも一つのRCT 
IIa すくなくとも一つの良くデザインされた比較研究(非ランダム化) 
IIb すくなくとも一つの良くデザインされた準実験的研究 (コホート研究・ケースコントロール研究等) 
III 少なくとも一つの良くデザインされた非実験的記述研究(比較・相関・症例研究)
IV 専門家の報告・意見・経験 

各評価・用語委員が分担して各論文から評価法を抽出し,過去の調査でも使用したデータベース(ファイルメーカーPro®にて作成)にその評価法と掲載論文のエビデンスレベルを入力後,そのデータを元に一括して解析作業を行った.

結果

今回2004年分の調査で抽出されたレコードは829であった.

2004年に2件以上の論文に採用された評価法出現度数と論文エンビデンスレベルを表1にまとめた.上位ランキングはFIM,MMSE,BI,ASIA,MAS,GCS,MMT,Fugl-Meyer assessment,SF-36,Ashworth scale,Berg balance scaleの順であり,単純な出現度数からのみ比較すると昨年同様FIMの出現度数が最も高かった.

次に2004年に2件以上の論文に採用された評価法を8疾患別に分類し,評価法出現度数順にを表2に示した.脊髄損傷・その他の脊髄疾患(ASIAが第1位),脳性麻痺・その他の小児疾患(GMFM),呼吸・循環器疾患(Borg scale),以外の5疾患はすべてFIMの出現度数が最も高かった.

さらに2004年に2件以上の論文に採用された評価法のなかで,エビデンスレベルIIb以上(Ia~IIb)の論文に採用された評価法の出現度数を表3に示す.

1998年,1999年,2000年,2003年,2004年の5年間の調査で抽出されたレコードは2,735であった.5年間で10件以上の論文に採用された評価法の出現度数を示したのがを表4である.また,そのなかで出現度数が50回以上の評価法(FIM,BI,ASIA,MMSE,GCS,SF-36)に関する経年的変化ををに表した.FIMの出現度数に関しては,1998~2000年に比べて2003~2004年が大きく増加している.

考察

5年間の評価法使用動向調査により評価に関するデータが蓄積され,使用頻度が比較的高い評価法とその経年的変化がより明確化してきた.

本評価法に関するより詳しい情報は日本リハビリテーション医学会のリハビリテーション関連評価法データベースを参照していただきたい.

今回当委員会では評価法追跡調査に加え,評価法の掲載論文についてエビデンスレベルの分析も行った.近年EBMが重視される中,各分野の医学会レベルで診療ガイドライン策定が活発化しており,日本リハビリテーション医学会においてもガイドライン委員会を立ち上げ,関連学会と合同で脳卒中ガイドラインの策定に取り組んできている.EBMに基づく治療の流れの中で評価に関する課題は大きく,本委員会としても評価・用語の面から,EBMの確立に積極的に関与する予定である.

また,評価・用語の統一化・標準化などの面からも,リハ学会他委員会および関連他学会などとも連係し,評価に関する提言を今後も積極的に行っていく必要がある.

【お詫び】リハ医学2004;41:727-732に掲載された「リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査 ―3―」は,「リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査 ―4―」の誤りですので,ここに訂正しお詫び申し上げます.

文献

  1. 住田幹男, 園田 茂, 大橋正洋, 小林一成, 近藤和泉, 首藤 貴, 千田富義, 豊倉 穣, 正門由久, 大川弥生, 眞野行生: リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査. リハ医学1999; 36: 553-555

  2. 園田 茂, 住田幹男, 大橋正洋, 小林一成, 近藤和泉, 千田富義, 豊倉 穣, 眞野行生, 蜂須賀研二: リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査 ―2―. リハ医学2001; 38: 87-90

  3. 園田 茂, 大橋正洋, 小林一成, 近藤和泉, 豊倉 穣, 森本 茂, 千田富義, 住田幹男, 眞野行生, 蜂須賀研二: リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査 ―3―. リハ医学2001; 38: 796-798

  4. 小竹伴照, 朝貝芳美, 豊倉 穣, 住田幹男, 田中信行, 浅見豊子, 高橋秀寿, 塚本芳久, 森田定雄, 森本 茂: リハビリテーション関連雑誌における評価法使用動向調査 ―4―. リハ医学2004; 41: 727-732

  5. 里宇明元: 脳卒中リハビリテーション・ガイドライン―策定経過と概要―. リハ医学2004; 41: 86-89